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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (21)
 次の日。
 第3試合:リシュネvs少年。
 ホーンと同時に、二人のちょうど中間の位置が、弾ける。
 広範囲の衝撃波が衝突し、巨木が薙ぎ倒され、宙へと舞う。
「うわーっ」
 飛行場の管制室から観戦する舞が、感嘆を上げる。眼下に広がるジャングルから、間欠泉のように木々が舞い上がる。
「ってゆーか……」
「てゆーか?」
 立て続けに、森の至る所で炎のない爆発が起こる。それはピンポイントで、かつ広範囲だった。
「あれ、俺ら対策だ」
「え? 私達? なんで?」
「俺達は頑丈じゃないが索敵能力は高い、だから遠距離からのある程度狙った攻撃は躱すことができる」
「でもああやって広範囲にある程度強力な攻撃をすれば、こちらは躱しようがないから、ってこと?」
「そうだろ。そうなんだが……」
 森の至る所が削れていく。
「……狙ってない? 乱れ撃ち?」
「いや、苦手なんだ、あいつら。APがそうなのか分からないが、ああいう広範囲に衝撃波を出す業っていうのを今までしてなかったんだな。だから正確に狙いを付けることができないんだ」
「必要ないって思ってたんじゃない? あの速さだもの、接近して正確に強力な一撃、普通それで勝てるし。あ」
 リシュネが森の上へと出てくる。視界が波立ち、リシュネへと衝撃波が飛んでいることが判る。それをリシュネは、空を跳ねて躱す。
「あれ……」
 衝撃波が次第に細くなっていき、そして間が短くなる。
「あれも私達を想定して?」
「だろうな……」
 リシュネが止まり、両腕を上げ、呪文を唱えている。衝撃波がリシュネに直撃し、体の形を変えていくが、気にせず唱え終えると、両腕を振り降ろす。
 リシュネの眼下、広大な森が、網目状にささくれ立つ。木々が跳ね上げられ、木の葉が霧のように空を埋め尽くし、轟音に楯突くように、ホーンが鳴った。
「うわー、あれされたら躱せないなぁ、っていうか死んじゃうかも」
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