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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (22)
 第4試合:朴雅樹vs結白舞。
「これが実質的な決勝戦ね……」
 舞は、拳を掌に打ち付けて、自らを奮い立たせる。
 昨日言った事は、本心。
 でも。
 全力は、出す!
 ホーンが鳴る。
 同時に。
 浮き上がるような音と共に、周囲の木が、一斉に燃える。
「……やるっ!」
 熱さのせいか、汗が噴き出す。
「でもね」
 舞は不敵に笑む。
「火は水で消せるし」
 両手を前で組み、
「分解すれば、酸素も作れて呼吸は確保、そして」
 上に上げ、
「水素の爆発で吹き消すこともできる!」
 振り降ろす!
 ……。
 ……何も、起こらない。
「……嘘……」
 そう、言うしかなかった。
 水蒸気が、ない。
 舞の周りに、水気が、なかった。
 あり得ない。
「……ここは私のテリトリーなのよ……そこに立ち入って、火で飛ばした……?」
 突然火が強くなり、トカゲの舌のように肌を舐める。
「ヒッ……」
 肌が、焦げる。
「……」
 私、死ぬ?
 う、ううん、そんなことないよね、雅樹だって手加減してくれるだろうし、勝敗も決しただろうし……。
 だが、火は、止まない。
 上下左右、見回せば、自分は炎の檻に、囲われていた。
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