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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (26)
「えっ……何言って……」
 雅樹は、何が起きたのか理解していなかった。
 伸ばした右手が、消し飛んでいた。
 舞が、消した。
 水球の崩壊と共に宙へと投げ出されていた舞の体が、何かに弾かれ雅樹の目の前へと飛び込み
「ごめん」
 掌を包む水塊を雅樹の顔面に押し付ける。
 水塊が、ガーゼ状になり、さらに透き通ったその見えない糸で編まれた網が、雅樹の頭部を越し通し、それは砂状の骨と水分のみへと変えた。
「うっ……」
 自分が作り出した惨状に、吐き気を催す。
 が。
 雅樹の、その先のない両腕に炎が点ったのを見て。
「お、往生際がっ!」
 両腕を振り降ろし、雅樹の胴体に水塊を叩き付ける。
 それは、赤い水たまりへと、変わった。
 音を立てて、地面へとこぼれ落ち、木の根の間に水面をたたえていた。
「はぁっ、はぁっ」
 息が、上がっていた。
 眼下の惨状。
 それだけが原因ではない。
 舞の体を、薄い水の膜が覆っていた。
 その水が舞を浮かせ、灰色の炎から守っていた。
 ふいごのように息を荒らせ、それは収まるどころが次第に酷くなっていく。
「も、持たない……」
 舞は地面へと降り、灰色の炎がない方へと移動していく。
「待てよ」
 びく、と、舞は止まる。
 あり得ない。
 轟音と共に舞の周りを炎が包み、その炎風が舞を吹き上げる。
「え、な」
 力を使い切っていた舞はその風に抗う事すらできず、ジャングルの空高く吹き飛ばされていた。
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