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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (31)
「やったー!!!!!」
 舞は、空港の階段を使ったひな壇の「二位」の位置で、まるで一位のように喜んでいた。両手に持つ目録を高々と掲げている。
「おめでとうございます」
 と、一応俊雄は拍手をするが、あまりにも現金な舞に苦笑いが止まらなかった。
「ま、約束だからな」
 と、自分は全勝して満足している雅樹が「一位」の場所に立つ。
「こんなものかな」
 「三位」の位置に座るリシュネ。1勝しかしていなかったが、あまり落胆してはいなかった。
「…………」
 対照的に、その脇で体育座りして何かをぶつぶつとつぶやいている少年は、1勝もできずに四位。
「水を差すようで悪いけど、今回の結果を踏まえて、またパワーアップするからね」
 と、まるで自分の子供達がけなされた親のように、智子が釘を刺す。
「その方がいいな、別に俺達は敵同士じゃない。来年ある、闇ってやつがどんなもんなのかわからないんだからな」
「そういえばそうだね」
 と舞は言うものの、あまりイメージは沸かなかった。
「さて、おっさん」
 と、雅樹はにやにやと笑う洋一を呼ぶ。
「この百万以外にもあるんだったよな、賞品ってやつが」
「ああ。どんなものだと思う?」
「……だな」
 舞が、跳び退く。
 リシュネがと少年が振り向く、その視線の先にいる雅樹は、殺気を帯びていた。
「あんたが俺と戦う、ってことなんじゃないか?」
「それは暗に、洗いざらい話してもらおう、っていう脅しかい?」
「いんや」
 雅樹は階段を降りていく。
「穂香の話じゃ、あんた、人間かどうかも怪しいって話だ。もしかしてあんたが最後の敵ってやつじゃないのか?」
「あながち間違ってないような気もするが、残念ながら君の相手は僕じゃない。賞品は、彼女と戦うことだ」
 それは、みるみるうちに人の姿へと変えていった。
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