KAB-studio > 風雅、舞い > 第十二章 超越する存在 (35)
風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (35)
「お前とは、サシでやる。舞、下がってろ」
「え」
「いいから下がってろ!!」
 舞は、二度うなずいて、離れていく。
「……」
 舞には、分かっていた。
 昔に戻るんだ。
 あの昔話に出てきた鬼のように。
 舞は洋一を見る。
「左さん……場合によっては、許しませんから」
「場合によっては?」
「……雅樹、もう元には戻らないかも」
「彼が死ぬ、って事は考えないんだ」
「それは」
 舞は、雅樹を見つめた。
「あり得ません」
「蒼炎……」
 雅樹が手に持つ刀を、蒼い炎が包む。
「俺を殺せるという話、面白いと思いたい所だが……舞達を巻き込むお前のやり方、絶対に許さん」
「うん、がんばって」
「ッ!!」
 神速。
 雅樹は遥へと突っ込む。距離、3メートル。
 遥が、雅樹へと一歩進んだ瞬間。
「ヒュッ」
 刀を横に薙ぐ、その刀が、鈍い音を立てて上へと跳ね上がる。
 跳ね上げられた刀を右手で捉えつつ、左手を遥へと突き出す。右足を蹴り出した格好の遥に向けられたそれは、閃光。
 赤道近くの熱い日差しすら消えてしまう、白い世界。
 雅樹は目を閉じ、遥も目を閉じている。
 続けて雅樹は左手を鳴らす。指先を取り巻くように銀色の光が疾り、それを遥へと向ける。銀色の光が一条の直線となって、まだフラッシュが消え去っていないその空間を貫いた。
 それは、遥のすぐ側をかすめていった。
 検索