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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (36)
「な……」
 雅樹は、目を閉じたまま。
 それでも、今の一撃は、当たると確信していた。
 にも関わらず。
「っ」
 真上に掲げていた刀を、真右に振り降ろす直前、止め、左に薙ぐ。
 その、薙ぐ所で、体が、止まる。
「え」
 雅樹は、信じられない言葉を、聞いた。
 雅樹の動きが止まっている間に、遥は一瞬距離を取り、ランダムに見えるルートを通って雅樹の真正面から近付き、スカートが大きく広がるのと同時に神速の左足が雅樹の右肩にヒットする。
「!」
 それは一瞬で折れ、右腕から刀がこぼれる。
「そろそろかな」
 左足をその肩に掛け、体を跳ね上げ完全に乗る。
「な」
「伏せてなさい」
 肩と頭を踏み台にして、大きく跳ぶ。雅樹はその反動で背中を地面に叩き付けられ、跳ねるように10メートル転がり、それを見下ろしながら遥は空港の屋上まで飛び上がる。
 瞬間。
 二人が居た場所に地震のような衝撃が疾り、地面がささくれ立った直後、空気すらも粉々に砕け、爆発した。
「えっ、何!?」
 舞は何が起こったのか理解できず、水の壁で衝撃波を防ぐ。そもそも、光が瞬いた瞬間から、状況を追えていなかった。
 リシュネは、呆然としてから、背後に立つ少年へと振り向いた。少年は、両手を前にかざして、肩で息をしていた。そして
「リシュネ、上!」
 言われて初めて、敵が、頭上から落ち、リシュネ達の目の前に着地したのを知った。
「!」
 後ずさりするリシュネ。
「なんで……完全に不意打ちだった……それに、見えていなかったはずだ!!」
 遥は呆れた笑みを浮かべる。
「視る手段なんて、ざっと数えて百以上ある。そのうち最低でも十くらいは身に着けておきなさい」
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