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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (37)
「あなた達は殺さないようにって言われてるし、巻き添えは食らわせられないわね」
 遥はやれやれと言いつつ、衝撃波で砂埃が舞っている方へと向かう。
「あら」
 その中から、無数の蒼炎が現れる。
 が、そのすべてが、遥の脇をかすめるだけで、直撃しない。
 遥は、ダンスを踊るように、歩くだけ。
 その周りを、まるで自ら避けるように、蒼炎が通過していく。
「ふざけるな!!」
 砂埃の中から、雅樹。手には、蒼炎に包まれた刀。
 それすらも。
「せめて身体強化APくらい速くないと」
 右ジャブ・左フック・右アッパー・左ストレート・右廻し蹴り。
 それが一瞬にして放たれ、無数の蒼炎が弾き飛ばされ、最後の右廻し蹴りが雅樹の蒼炎に包まれた刀を受ける。
「な……」
 驚愕する雅樹の目の前で、その刀は、音を立てて割れた。
 右足は戻ることなく雅樹の腹部を射抜き、折れた刀の柄を持つ右手を掴んで側面に回し、踏みつけるようにして地面に叩き付ける。
「へぇ、往生際が悪いのね」
 白目を剥いた雅樹の周り、何もないはずの空間を凄まじい勢いで叩き付ける。
 まるで叩いた場所に現れるように、雅樹の周りに赤炎が現れ、現れると同時に殴り付けられ、それは弾けて爆発し、その爆風すらも叩き潰し、雅樹が発現させているはずの赤炎が、逆に雅樹の体を壊していった。
 爆発が終わり、舞が、口元を押さえる。
 雅樹の服はぼろぼろになり、その顔は、胸は、皮膚が剥け、焼けただれていた。
 それでも。
「おい」
 雅樹は声を出した。
「はいはい、ちょっと待ってね」
 と、全く意に介さず、雅樹の体をひっくりがえしてうつぶせにし、背中に座る。
「待っててもらう間、ちょっとお話でもする?」
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