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風雅、舞い - 第十二章 超越する存在 (39)
「お前、一体なにを」
「ふふふ」
 恍惚の笑みを浮かべてから、遥は、何事かを口走る。
 何かの、呪文。
 雅樹が、声にならない声を上げたと同時に、地が揺れ、空が弾け、遥の両手に持つそれが、赤い紐となって現れる。雅樹の悲鳴が、大地の悲鳴となって真下から響き渡る。
「これ、切ったら、死ねるわよ。嬉しくない? 嬉しくない??」
 まるで子供のように、遥は話しかける。雅樹はだが、ただただ悲鳴を上げ続けるだけ。
 遥の視線は、上空へと向けられる。
「視線が混乱してるね。殺されるのそんなに嫌? でも殺しちゃおっかなー、どうしよっかなー」
 その笑みが、消える。
「殺しちゃお」
「!!!!!!」
 涙を撒き散らして飛び掛かる舞。手には、水榴。
 遥は無関心な表情を崩さず、冷静に舞の足を蹴り飛ばす。
「!!」
 舞の体が回転して宙を舞い、その体を水が包む。
「馬鹿ねぇ」
 手に掴んでいたそれを離し、立ち上がる。
 舞は、その体を包む、水榴によって、宙を舞い、鋭角に落ちて遥の背後から攻める。手を突き出し、その手に水槍が現れ後頭部を貫く。
「言われたでしょ」
 遥はそれすらも躱し、さらにその水槍が剣に変わり横に薙ぐのも見ずに伏せて躱し、
「殺すなって」
 逆立ちして右足を舞の胸に叩き付ける。上体全面の水が全て飛び散り、その痛みを無視して舞は両手で遥の足を掴もうとする。手には、水榴。
 遥は逆の足で軽く舞の右手を蹴り、水が飛び散る中その軌道は逸れ、足を捉えることなく空振りし、
「ぐふっ」
 足は戻さす体を伸ばして舞の胸を再び右足で蹴りつける。舞の体は上空へと跳ね上げられた。
 その体を、空中でリシュネが抱える。舞は、意識を失っていた。
 ホーンが鳴る。
 洋一が、それを手に持っていた。
「終わりだ、遥」
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