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風雅、舞い - 第十三章 二人の間 (4)
「早い! 早いって言ってんのよ、聞いてんの!?」
「早いって言ってるよー! 雅樹!?」
 山の中を駆け上がる雅樹を、舞と智子が追っていく。智子は肩で息をし、なんとか足が動いている、という状態だった。
 舞は余裕で追い付くことができていたが、智子に合わせていたため、雅樹との距離は大きく離されていた。
「ったく……」
 舞は追うのをやめ、引き返し、智子の手を取る。
「ありがと……」
 ぜぇぜぇと荒い息で舞を見上げ、そのまま、動きを止める。
「…………」
「…………」
「…………?」
 舞は、登ろうとしない智子を見て首を傾げ、智子は智子で、休んでいる風でもなく、何かを待っている。
「……あの……」
「……え? あれ? あの、運んでくれるんじゃ……」
「運ぶ!?」
「……あ! ごめんなさい! そうよね、APじゃないんだし」
 あはは、と乾いた笑いを上げてから、力尽きたのかそのまま地面にしゃがみ込む。
「あー何やってるんだろ……ごめんね、リシュネと勘違いしちゃった」
「そっか、リシュネなら抱えて跳んだりできますよね」
 ただの会話の流れだと分かっていても、それでも自分にはAPのような力はないのだと感じさせられる。
 そう感じて、舞も並んで座る。視線は斜面方向へと向く。木々の下には、なんとかここまで入ることができたバンが置いてあるはずだった。高速と国道を乗り継ぎ、東北の山奥へと三人と機材を運んだバンは、さすがにこの岩山を登ることはできなかった。
 視線を上げると、広がる森、遠くに山々、その上に空、と、自然しか目に入らない。この風景は、朱き泉と碧き泉で見飽きていた。
「泉って、どこも同じような感じなのかな」
「朱き泉と碧き泉、ここと似てる?」
 息はまだ落ち着いていなかったが、探求心が誤魔化した。
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