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風雅、舞い - 第十三章 二人の間 (5)
「似てるわけじゃないけど、どこも自然が多くて……人がいない」
「こんな山奥じゃ人住めないでしょ」
「住めなくはないけど」
 否定されたみたいでかちんと来る。
「まぁでも確かに、住みづらいのは確かだけど。というか、そういう場所を選んでいるというか」
「え?」
 それは、智子にとっては聞き逃せない話だった。
「それはないでしょ。まず始めに泉ありきじゃない」
「だとは思うんですけど、泉の場所って、なんていうか、天然の要塞というか……」
 朱き泉も碧き泉も、人を寄せ付けないものがあった。
「外界と隔絶されていたし、何度か他の村と戦争してたりするんですけど、そういうときにも有利に働くような地形だったんですよね」
「つまり、そういう場所に、泉を作ったのではないか、と」
「そこまでは言いませんけど……なんとなく釈然としない事って多いんですよね、泉に関しては」
「たとえば?」
「素人考えですけど」
 と、前置きしておいて。
「たとえば、名前。赤、青、黒、白」
「朱雀、青龍、玄武、白虎。中国の風水とかのことよね」
 と言いつつも、智子にとっては専門外の知識だった。
「そうなんです。でも、これって本当に意味があって付けられたのかなって」
「そりゃあるでしょ、朱き泉の朴さんは炎の力を使うことができて、碧き泉の結白さんは水の力が使える」
「それこそが、後から決められたもののような気がするんです。泉って、どこも似てるんです、感じが。だから、本当は火の力とか水の力とか、そういう風に分けられてなかったんじゃないかって」
「それはたとえば、結白さんが火の力も使えるかも、ってこと?」
「……可能性の話としてはそうです」
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