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風雅、舞い - 第十三章 二人の間 (6)
 舞と智子は再び歩き出し、赤土の斜面をゆっくりと登っていく。
「ただ、私に雅樹のような力は使えないとは思うんです。洗礼の話ってしましたっけ」
「資料としては読ませてもらったけど」
「泉の底で力を授かったときに、その力を渡された、そんな気がするんです。渡されたってことは、渡した人がいるんです」
「人?」
「あ、そういうわけじゃなくて……雅樹も泉の底で主みたいなのに会ったって言ってたんです。人じゃなくても、なんていうか、泉の神様みたいなものがいるのかなって」
「泉の神様、ねぇ」
「? ……食いつき悪いですね」
「え”」
 気持ちを悟られて、智子は嫌な顔をする。
「そりゃ……私は科学者で、そういうオカルトっぽい話はどうもね」
「でも私達はそのオカルトの塊だと思うんですけど、APだって」
「APは科学的に解析してるわよ。あなた達にとって、力って魔法みたいなものなのかもしれないけど、科学的に解析できて、利用できると考えているから」
「そういう立場だと私達のことは理解できないと思うんですけど」
「理解できなくてもいいの、観測さえできれば……ここ?」
 登りきったそこは、木々は減り、草が敷き詰められ、灰色の岩肌が見え隠れする、高台のような場所だった。
 その中の、岩が集まっている方向へと舞は歩いていく。
「分かるの?」
「はい、感じますから」
 泉独特の、力の流れ。岩が重なり合っている場所から吹き出してくるように感じられる。朱き泉で感じたように、それは拒絶しているようにも、受け入れてくれるようにも感じられた。
「この中かな……」
 岩の間をのぞくと、洞窟のように地面へと続いているようだった。
「懐中電灯あります?」
「持ってきてるけど……酸素は大丈夫? 降りたら酸欠なんて嫌なんだけど」
「水から酸素作れますから」
 舞はバックパックから木で編んだ小さな樽のような水筒を取り出す。護符が巻かれたそれを三本取り出し、手に持った。
「……いいですか?」
「良くないけど……しかたないでしょ」
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