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風雅、舞い - 第十三章 二人の間 (11)
「なんだか、自分は関係ないって言いぐさね」
「関係あるから、だ。お前、赤葉の話聞いただろ」
「うん、だからこそ」
「ちげーよ、その前の話だ」
「あ……」
 戦中の話。
「俺達がここに来た目的はなんだ」
「玄き泉の洗礼を受けた人間がいないか探すため、いなければ洗礼を受けられるか調査するため」
「その目的は」
「災厄の日に四つの泉を受け継ぐ者がいなければならない」
「そんな日、これまで何百年となかったんだ。少なくとも文献には載っていない」
「今回も嘘だっていうの!?」
「そうじゃねぇよ、今回は特別だってことだ。災厄の日ってのがどんなもんかはわかんねぇけど、その日のために何百年って犠牲を払う必要があるのか、ってことだ」
 犠牲。
 泉を継ぐために、生活を、人生を、全てを犠牲にするということ。
「その日のために、俺は、何十年と生かされ続けてきた」
「……雅樹……?」
「きっと、災厄の日っていうのを何とかするのに、俺達の力が必要なんだろ。それまではいてやるよ。お前や、結白さんに恩があるからな。でも」
 雅樹は、ゆっくりと息を吐く。
「正直、もう疲れたわ」
「雅樹、まさか……」
「ああ」
 雅樹は、寂しそうな笑みを向けて、言う。
「舞、俺、もう死ぬわ」
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