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風雅、舞い - 第十三章 二人の間 (13)
「!」
 智子が反射的に電源を切る。振り切れたメーターが少しずつ戻っていくその間、洞窟を立て続けに振動が襲う。
「嘘、冗談でしょ!!」
 さっき言った言葉が現実となって、普段は信じるはずのない「罰」という言葉が頭をよぎる。智子は這うようにして出口へと向かい、階段を上っていく。
 登り切った時には、それが地震ではないことに気付いたが、それ以上に最悪の事態だと感じさせる光景がそこにはあった。
「こんのやろぉ!!」
 雅樹が腕を振り、蒼炎が波打つ。疾るその先、草のほとんど生えていない地面に直撃し一瞬にして地面が消え去る。その上を跳ねる舞は、水を纏い、地面を滑るように移動する。
「橙炎!」
 雅樹の両手に橙色の炎が点る。
「…………」
 雅樹から距離を取りつつ、回り込むように移動し、その間に護符を取り出す。
「逃げるな!」
 どっちが、と思いつつ舞は停止し、護符を投げる。その動きを見てから、雅樹は両腕を振るう。橙炎が分裂しつつ放たれ、それはそれぞれ自由な軌跡を描いて舞へと飛ぶ。
 舞は、目を閉じる。
 炎が疾れば、波紋が広がり、舞へと届く。それは一瞬と言っていい時間。舞はその刺激に促されるようにして体を跳ねさせる。
「何!?」
『碧き槍よ点を射抜き破を知らしめよ!』
 手を伸ばした瞬間、舞の腕を包んでいた水が目の前の護符へと飛び、その護符に触れた瞬間、雅樹の右肩が跳ね飛ぶ。
「ぐっ!!」
 同時に舞の背後に橙炎が着弾する。二発躱し、一発を水の衣で弾き、三発はかすりもしない。しかしその一発一発は、重い。
「きゃーっ!!」
 智子は隠れるように洞窟へと戻っていき、瞬間、雅樹の肩を弾いた水槍の破片が周囲へと飛び散り地と木々を削り、橙炎は爆音と共に土煙を舞い上げた。
 あんた達、何やってるのか分かってるの!?
 そう口出しすれば、殺される。そう感じさせる程の戦闘だった。
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