あり得ないと思った。
もう諦めようとしていた。
穂香さんがいる限り、それは起き得ないのだと確信していた。
それでも、どこかで期待している自分がいた。
それが、今、目の前にあった。
舞を覆い隠すように、雅樹が舞を組み伏せている。雅樹の右手は、舞の左手を再び握っていた。瞳は真摯で、冗談でも、遊びでもないことを訴えている。だがその奥には、怯えのような、弱い揺らぎ。
一番気になることを、訊く。
「……穂香さんは……」
「穂香は今いない。あいつは……」
雅樹は唇を噛む。
「あいつは、嘘をついていた。俺は、死ぬ方法を探していた。なのにあいつは……それを隠していた」
遥が言った、龍脈との継ながりを断つという手段。
「あいつは知っていたんだ、俺が死ねる方法を。でも黙っていた。あいつの気持ちもわかる。でも……もう俺はあいつを信じられないんだ。この前の戦いでも、あいつは……」
「雅樹……」
雅樹の目は、今にも涙が溢れ出しそうに見えた。
「…………」
雅樹が今、私を抱こうとしている。
それは、弱さを紛らわそうとしているだけだろう。
穂香の代わりかもしれない。
明日には何もなかったことになっている、そんな可能性だってある。
それでも。
「……いいよ」
目の前に、想い描いていた雅樹の胸板があった。そしてそれが全てだった。
「……すまない……」
「謝んないでよ……」
それが夢であることを確信しながら、ならばその夢を忘れぬよう体に染み込ませよう、舞は雅樹の体に手を回し、唇を重ねた。
もう諦めようとしていた。
穂香さんがいる限り、それは起き得ないのだと確信していた。
それでも、どこかで期待している自分がいた。
それが、今、目の前にあった。
舞を覆い隠すように、雅樹が舞を組み伏せている。雅樹の右手は、舞の左手を再び握っていた。瞳は真摯で、冗談でも、遊びでもないことを訴えている。だがその奥には、怯えのような、弱い揺らぎ。
一番気になることを、訊く。
「……穂香さんは……」
「穂香は今いない。あいつは……」
雅樹は唇を噛む。
「あいつは、嘘をついていた。俺は、死ぬ方法を探していた。なのにあいつは……それを隠していた」
遥が言った、龍脈との継ながりを断つという手段。
「あいつは知っていたんだ、俺が死ねる方法を。でも黙っていた。あいつの気持ちもわかる。でも……もう俺はあいつを信じられないんだ。この前の戦いでも、あいつは……」
「雅樹……」
雅樹の目は、今にも涙が溢れ出しそうに見えた。
「…………」
雅樹が今、私を抱こうとしている。
それは、弱さを紛らわそうとしているだけだろう。
穂香の代わりかもしれない。
明日には何もなかったことになっている、そんな可能性だってある。
それでも。
「……いいよ」
目の前に、想い描いていた雅樹の胸板があった。そしてそれが全てだった。
「……すまない……」
「謝んないでよ……」
それが夢であることを確信しながら、ならばその夢を忘れぬよう体に染み込ませよう、舞は雅樹の体に手を回し、唇を重ねた。