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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (1)
「嘘……だよね」
 舞は、目の前のカプセルに付けられた名札を見て、目を疑った。
 そこには「木村俊雄」と書かれていた。
「木村……君?」
「今はまだ起こせないから、もう2時間ほど待って」
 聞いたことのない声を聞いて、舞は振り向く。視線の先には、リシュネを想像させる金色の髪の少女がいた。
「誰、あなた」
 フィオは眉間に皺を寄せる。舞の声音は、殺意を含んでいた。
「私はフィオ・アッツェ。臨時の研究員です。俊雄はAP化への強い希望を持っていたので、その処置を施すことになりました」
「な、何勝手なことを」
「文句は俊雄本人に言ってください、2時間待てば覚醒できますから。それに」
 フィオはカプセルに近付き、スイッチを入れる。
「別にこれは準備段階ですから、AP化をキャンセルすることも可能です」
 カプセルのカバーが開く。中には、確かに俊雄が、全裸で浮いていた。
「!!」
 思わず舞は顔を背ける。
「……そういう歳でもないでしょ。それとも見慣れてないの?」
 見慣れていない。
 だって、つい二週間前に雅樹のを見たくらいだし……。
 そう、二週間前。
 あの日の朝、雅樹の姿は消え、自分も何とか理由を付けて誰もいない碧き泉に逃げて、気持ちの整理が付いた昨日、このファインダウト社に戻ってきたばかりだった。
 俊雄の姿がなかったからてっきり諦めたのだと思っていた。
 なのに。
「いない間になんだか大変なことになってたのね……」
「そーね、あなたは自分の立場をもっと自覚すべきだわ、結白舞」
 その大きなバレッタを付けた少女を、殴りつけたい気分だった。
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