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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (11)
 リシュネは背を伸ばし、ゆっくりと溜息をつく。
「その様子じゃ、二人とも知らなかったみたいね」
 舞はうんうんとうなずく。
「……私達APも、魔法みたいなものは使える」
「え!?」
 と驚く舞。
「でも、方法が全然違う」
 リシュネはグラスを睨み、呪文で命ずる。
『割れろ』
 そのストレートな意志と共に指を弾けば、氷の中心から亀裂が走りグラスと共に瓦解した。
「おー」
「……なるほどね」
 フィオは驚かず、代わりに眉間に皺を寄せる。
 ……私の知っている魔法は、本当にマジックのようなもの。でもこの二人が持つ能力はそんな生やさしいものじゃない、それはきっと――兵器。
「ねぇ、左さんの目的ってこれ?」
「違う……と思う。私は、聞いてない」
 聞かされてないだけじゃないの、という軽口も、先ほどの力を見ていれば口をついて出てこない。
「でも少しおかしい。ここの研究者達が気付かなかったとは思えないし」
 それに左も知っていて当然だと思う。
「んー、多分気付かないと思うよ。すっごく複雑なルールだったから。全文献読んでやっとちょっとだけルールが分かったくらいだし」
「そんなこと」
「信じられないなら自分で調べれば? じゃ、私はこれで」
「左に失礼のないようにね」
「はいはい」
 フィオは席を立ち、リシュネの指摘に肩をすくめる。
「!」
「え?」
 その手を舞が掴み、引き留めた。
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