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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (12)
「な、なんですか?」
「舞、どうしたの」
 舞の雰囲気は、明らかに何かを警戒していた。リシュネはその原因を読み取ろうとするが、すぐ近くにいる舞の力をより強く感じてしまい、舞が感じているものが何なのか、リシュネには分からなかった。
「……今、大きな音が伝わってきた」
「音?」
「うん、水蒸気を通して感じ取れた。あ――」
 その声が掻き消える程の音。ビル全体が揺れたかという程の轟音が鳴り響く。
「――――」
 声にならない金切り声をフィオは上げ、それを被い包むように舞が肩を抱く。
 轟音が止んだその次の瞬間、再び轟音が鳴り響く。その音は鈍く、同時に、食堂の壁が粉々に崩れた。
 壁の奥から現れたのは、少年。
 リシュネは、舌打ちをする。
 少年の体は浮いている。喉を掴まれ、持ち上げられていた。その喉を掴む者が、壁の奥から現れる。粉塵が舞う中から、白い白衣に身を包んだ女性が現れる。
『ギッ』
「イっ!!」
 声にならない声を上げて、左手の力を強める。少年の首が歪み、それを食い止めようと少年は女性の手首を掴んでいた。だが、少年の両手をもってしても、離すことはできない。
「!」
「え、待って舞!」
 リシュネの制止も聞かず、首を絞められる少年に反応して舞は腕を振るう。机の上で溶けつつあった炭酸水の氷塊が氷の刃と変化し弧を描いて女性へと飛んだ。
 肉が裂ける音、骨の折れる鈍い音、宙に舞う血飛沫。
「え……なんで!?」
 その刃を止めたのは、少年の左手だった。
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