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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (13)
「お母さんに……何するんだっ……」
「え!?」
「彼女は……鳳 静間(おおとり しずま)、彼の母親よ」
 そのリシュネの説明は、苦渋を含んでいる。
「お母さん!? そんな……だって、首絞めてるんだよ!?」
「錯乱状態だし、それに……彼女は、多分彼のこと知らない」
「……子供のことを、知らない……?」
 少年は、自らの母親に首を絞められ、もがいている。だが、少年が母親を直接攻撃することはない。
 自らの名を呼んでもらったことのない息子が、両親を慕う、その気持ちをリシュネはよく知っていた。彼はことある毎に二人のカプセルを見つめ、その日を待ちわびていたのだから。
 ……それが、この結果なの!?
「とにかく! とにかく、彼が何もしない間は舞も手を出さないで」
 怒気を含んだリシュネの声音に、強い意志を感じて、舞は従った。
「わかった、でも」
「分かってる!」
 少年の首が、音を立てて折れ曲がっていく。少年の顔から生気が抜けていく。
 リシュネは「どこまで壊れたら回復不能か」を思い出す。彼の場合、確か全回復が可能なはず……でも本当に? もし回復できなかったら? 何らかの後遺症が残ってしまったら?
 彼の気持ちは分かる。信じたくない気持ちも分かる。でも――。
 その彼の口から、血が滴った。
「ごめん」
 一瞬で、リシュネは少年と母親の間に入り、腕を薙いだ。
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