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風雅、舞い - 第十四章 混乱の我家 (15)
 母親は腕に刺さる赤い槍を折る。
 同時に背後から飛んできた椅子が頭に当たる。振り向く間もなく畳一畳はあるかという長テーブルが叩き付けられ、母親の体は床を跳ねる。
 床を跳ねながらも体制を立て直すが、間髪入れずリシュネが詰めさらに椅子を叩き付ける。リシュネは顔の右半分が砕け金髪が赤色に染まっていたが、それでもひるむことなく攻撃を続ける。
「マイ!」
 フィオの声に舞は立ち上がり腕を振るう。
 それを見て取った母親は、壁側へと跳ねてリシュネとの距離を取り、腕を上げ、
『ヴァ、バ!』
 腕を壁へと叩き付ける。衝撃で壁に大穴が空き、光が差し込む。
「! だめ!」
『蒼き水よ刃と――』
 リシュネと舞が追いすがる中、母親は外へと飛び出し、一瞬で空へと消えた。
「……言っちゃった」
「何言ってるの、追わないと!! ……ッ」
 危機が去り気の抜けた舞とは対照的に、リシュネはそれを追って飛び出す勢いだったが、崩れた顔面を押さえて崩れ落ちた。
「! リシュネ! フィオごめん、水はもういいから先生呼んできて」
「駄目! もしかしたら……父親の方も、同じ状態かもしれない」
「ち、父親もって……わかった、フィオ、ここにいた方が安全みたい」
 フィオは声もなくうなずく。だがそれ以前に、厨房から出る気力もなく、その場にしゃがみ込む。
「……舞、彼は?」
 壁沿いに、体をよろめかせながらリシュネが舞へと近づく。舞の懐では、少年がふいごのように呼吸を荒げていた。だが、首の傷は回復しているように見えた。
「……くっ!」
 リシュネは壁を叩き、自らの不甲斐なさを呪った。
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