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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (6)
 温泉街の外れ、街灯がぎりぎりある場所にトラックを停め、密閉型のカーゴへと入る。
 中央に固定されたカプセルが巨大な機械に継ながれ、さらにそれがノートパソコンに接続されている。それ以外にも無数の段ボール箱が置かれており、智子はその中から薬品を取り出してラベルをチェックしていた。
「中……寝てるんですよね」
 カプセルのハッチは不透明になっていて、中に少年が寝ているかどうか分からなかった。
「見えないのは不安ですね」
「モニターしてるから大丈夫よ。可視光でも影響を与える可能性があるから遮光する必要があるのよ」
「眩しいと寝られないからってわけじゃないんだ……」
 舞は不透明なハッチに手を沿える。舞はなんとなくリシュネの姿を思い出す。
「これから起こすから、少し外に出ていてもらえる?」
「あはい!」
 跳ねるように手を引っ込めて、カーゴから降りる。振り返って見れば、智子が薬品の入ったボトルを逆さまにして器具にはめ込んでいた。
 カーゴの外に出て見上げれば、道沿いに木々が並び、葉は赤く色づいている。舞達のいる場所が少し高い所にあるからか、見下ろす位置に煌々ときらめく繁華街があった。その夜景は白いもやが掛かっているように見えて、暖かく感じられた。
 もう秋も半ば。なんとなく肌寒い。
「まだかな〜」
 舞が中を覗こうとした時、大きな足音を立てて智子が出てくる。
「ちょっと待ってて!!」
 その語気は明らかに荒かった。智子が去った後を見れば、少年はカプセルに腰掛け、カーゴの天井を見上げていた。
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