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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (9)
「お二人はご兄弟ですか?」
「あ、はい、そうです」
 目の前の女将から質問されて、舞はできるだけ自然を装い答える。
「ご姉弟で、よくこんなところまでお越しに」
「ま、まぁええと、この近くに実家がありまして、決して家出とかそういうのではないですよ?」
 ああ、何言ってるんだろう私、なんか嘘バレバレ? むしろわざとらしい?
「めっそうもない。私もここで長年お客様を見ておりますが、家出されてきた方は、皆様暖かい服装をなさっておりませんから」
「あ……」
 確かに、舞は行き先を聞いてかなりの厚着をしてきていた。少年はAPで寒さを苦にしないためか、若干寒そうな格好だったが。
「じゃあ、どう見えます?」
「ちょっ、」
 たまに口を開いたと思えば、少年は挑戦的な質問を女将に投げ掛けていた。
「そうですねぇ……わたくしが感じますに、お二人は何かしなければならない使命のようなものを負って来られたのではないのですか?」
「!」
 思わず舞は足を止める。
「な、なんででしょう」
「お二方ともお顔から強い意志が見て取れますので。まだお若いのでそのようなことはないとは思うのですが……なんだか、」
「……なんだか?」
「商談に臨まれるサラリーマンのようなお顔をしていらっしゃいます」
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