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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (12)
「ん、もうちょっと向こう行ってくれる?」
 湯船の真ん中にいる少年を少しどかして、舞も湯船に入る。風呂場そのものはあまり広くないのだが、洗い場が狭い分、浴槽は三人は余裕で入れるほどの大きさで、舞は少年に向き合うようにして入って、同じように足を伸ばした。
「はぁ〜、生き返る〜……?」
 見れば、やっぱり少年は両手両足を伸ばす舞をまじまじと見ていた。
「やっぱりなんかえっちなこと思ってる?」
「違いますよ。それに、気にするような年齢差ではないと思いますけど」
「それとこれとは別よ、別」
 そう。
 兄とはだいぶ大きくなるまで一緒にお風呂に入っていたし、雅樹とも、した。
 だから、これは慣れとかそういうことではなく、「誰に」ということなんだと思う。
「それに、あんたってなんか口調が大人びてるし、もしかして本当はすごく年上なんじゃない?」
「……それは否定しませんけど」
「え”え”っ!!?」
 思わず舞はタオルで体を隠して後ずさる。
「……僕のこと、先生から聞いていないんですか」
「……それは、キミから直接聞いて、って言われた」
「ああ、そうか……」
 約束。リシュネや先生といくつも交わした約束が、ちゃんと守られている。
 それが心地いいからか、少し、話したい気持ちになった。
「僕は培養器の中でこの体になるまで育てられてから、必要な記憶や技術を直接植え付けられたんです。僕が産まれた――つまり、培養器から出た時にはすでに、この知能と意志が備わっていた」
「それってつまり――」
「――『子供』という期間をスキップした、ということです」
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