KAB-studio > 風雅、舞い > 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (15)
風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (15)
「……ごめん、本当にごめん……」
「…………」
 少年は浴槽の端で身を丸めるようにしてふてくされていた。
 すでに、少年が迸らせてしまったものは、舞が自慢の能力を使って外に捨てていた。
 正直、そんな湯に入り続けるのは生理的に少し嫌だったが、それでも機嫌を損ねてしまった少年がまだいる以上、先にあがるわけにもいかなかった。
「……別に、大丈夫ですから」
「えっ、なに?」
「APは生殖能力がありませんから、間違っても妊娠なんてしません」
「あー……まぁ普通だってそうだろうけど……でも」
 話題を変えたくて、聞いてしまう。
「それって……いいの?」
「なにがです」
「その……子供が作れないって」
「欲しいとは思いません」
 今は、まだ。
「それに選択権は与えられていませんから」
「APじゃなくすることってできないの?」
「無理だって先生は言ってた。APは完全に人でない状態にしてしまうから、もう元には戻せないって」
「そうなんだ……でも、子供くらい作れてもいいのに」
「APの寿命はとても長いから、もしそれで子供が作れたら」
「増える一方……」
「左さんが何考えているか分からないけど、でも、僕みたいなの増やしてどうするんだろう」
 少年は空を見上げる。
「……紅葉、ですよね」
「え?」
 舞も見上げる。夜空一面に広がる赤い葉々を、少年はうらやましそうに見上げている。
 検索