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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (23)
 少年の両親が住んでいたという木造の家は、完全なあばらやになっていた。
 長年の風雨そして豪雪によって、屋根の半分は剥がれ落ち、壁も所々なくなっている。手入れされている様子は全くなかった。
 半壊とはいえ、元々は都心で見かける一軒家の2倍から3倍という大きさ、中央の巨大な柱とその頭上で十字に延びる黒い梁が、威圧的な雰囲気を放っていた。
 舞は軒先からゆっくりと上がる。板張りの床は歩くたびに軋み、今にも抜け落ちそうだった。
「以前からこんなだったんですか?」
「……あのねぇ、私が前来た時は、ここに彼の両親が住んでたのよ?」
「そう……なんですよね」
 しかし、生活感は全く感じられない。
「あれ……」
 舞はきょろきょろと見回す。
「何、何かいる?」
「えっと、彼がいるかなと思って」
「……彼の聴力なら目の届かない所にいても聞こえるでしょ。でも……」
 智子から見ても、少年と舞は、うち解けているように見えていた。
「何が訊きたいの」
「なんで、こんな何もない所に一軒だけなのかなって」
「この辺はそういうもんでしょ。ここに来るまでだって家なんて点々としかなかったし」
「でもそういう家ってどこも道路に面していたし、畑もあったし、そういうのとちょっと違うかなって……」
「彼の両親のAP化はかなり難しいものだったの」
「?」
「だからAP化を開始してからは話す機会はなかったし、病気の関係もあってすぐAP化を開始したから……事前調査くらいでしか知らないんだけど」
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