胸に突き立てられた銛も、少年は引き抜くことができなかった。
銛の先に返しが付いているわけではない。
そもそも、油断していたからといってAPの身体に深々と突き立てられる刃が存在するとは思えない。
「何が……っ?」
少年はよろけ、後ろへと下がる。背中に二本、胸に一本、バランスを崩させるのに十分の重さだった。
……そんなはずがない。APは不死身だ、そんな簡単に死ぬわけがない。死ぬわけが――。
母の死体が目に入る。母を死に追い遣った、銛。その脇に滴る血溜りは、母による血だけではない。
意識が朦朧とし、頭が回らない。
「そんなわけない……ないんだよっ!!」
少年は胸の銛を掴み、引き抜こうとする。だがそれは、びくともしない。
あり得ない!
なんで抜けない!
なんで……こいつらが母さんを殺したんだぞ! こんなふざけたお面を被った奴らに母さんは殺されたんだ! なのに……。
「くそっ!!」
銛を引き抜くことを諦め、右手を振りかざして男達に向かう。
だが、最初に男を轢き殺した時の速さも強さもない。それどころか、よろけてその場に膝を付いてしまう。
人影を感じて、少年は見上げる。河守と呼ばれた男が、手に銛を持ち、立っていた。銛の先には血、赤い、母親の血。
「こ――――ッ!!」
少年は、激高する。
だが、体は動かなかった。
『いい加減死ねよ、化け物』
男は、少年の顔面に銛を突き立て、振り回し、池へと投げ捨てた。
そんな――。
少年の右手が母親へと延びる、だがその姿は水面へと消える。少年の体は水没し、地底湖の底の底へと沈んでいった。
銛の先に返しが付いているわけではない。
そもそも、油断していたからといってAPの身体に深々と突き立てられる刃が存在するとは思えない。
「何が……っ?」
少年はよろけ、後ろへと下がる。背中に二本、胸に一本、バランスを崩させるのに十分の重さだった。
……そんなはずがない。APは不死身だ、そんな簡単に死ぬわけがない。死ぬわけが――。
母の死体が目に入る。母を死に追い遣った、銛。その脇に滴る血溜りは、母による血だけではない。
意識が朦朧とし、頭が回らない。
「そんなわけない……ないんだよっ!!」
少年は胸の銛を掴み、引き抜こうとする。だがそれは、びくともしない。
あり得ない!
なんで抜けない!
なんで……こいつらが母さんを殺したんだぞ! こんなふざけたお面を被った奴らに母さんは殺されたんだ! なのに……。
「くそっ!!」
銛を引き抜くことを諦め、右手を振りかざして男達に向かう。
だが、最初に男を轢き殺した時の速さも強さもない。それどころか、よろけてその場に膝を付いてしまう。
人影を感じて、少年は見上げる。河守と呼ばれた男が、手に銛を持ち、立っていた。銛の先には血、赤い、母親の血。
「こ――――ッ!!」
少年は、激高する。
だが、体は動かなかった。
『いい加減死ねよ、化け物』
男は、少年の顔面に銛を突き立て、振り回し、池へと投げ捨てた。
そんな――。
少年の右手が母親へと延びる、だがその姿は水面へと消える。少年の体は水没し、地底湖の底の底へと沈んでいった。