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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (33)
『鳳家は代々この地を守ってきた、鎮守様だ。だが同時に災いの神でもある』
「だからそれが矛盾するんだって」
『矛盾はしない。要は守りすぎたのだ。この村を外と遮断し、交流を無くした。元々貧しいこの土地に、自活していくだけの作物は育たない。この村が滅ぶのは時間の問題だった。そこに』
 舞は、目の前の女であろう者が、嘲笑したように感じた。
『自分達は外へと出、遊び、挙げ句流行病を持ち込んだ。あのまま放っておけば三日三晩で村は死体で埋め尽くされるところだったよ』
「な……そういう病気じゃ」
『だから我々は鳳家を追い出した。村を我々の元に取り戻したのだ!』
 女が手を挙げ銛を掲げると、後ろに立つ者共も銛を突き上げ勝ち鬨を上げる。
『元々、我々と鳳家は違うのだ、我々は普通の人間であり、鳳家こそが異常だった。だからあの者達が出て行くのが当然』
「異常って、そんなくらいで」
『超能力、知っているだろう』
「え――」
『鳳家はな、代々、風を操る術を知っている。声を掛ければ風が吹くのだ、本物の超能力だよ! それを目の前で見せられたら、あんただって』
「あははははは!」
『!?』
 舞は、思わず笑ってしまった。
「そっか、そういうことだったんだ! あははははは……」
 舞の笑いは止まらず、洞窟中に響き渡る。
「あははははあ……あー、なんで私同じミスしたんだろう……ううん、きっと」
 そう。
 泉というものは、そういうふうにできている。
『な、何がおかしい……』
「――私の名は結白舞、碧き泉の力を受け継ぎし者。白き泉よ、泉を継ぎし我に応え、受け入れよ」
 その声を放てば、風から違和感が掻き消え、暖かいそよ風となる。舞は太股に刺さった銛を抜き投げ捨て、立ち上がって言った。
「――私はね、あんたの言う化け物、その同類よ」
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