『お、お前もあいつらと同じなのか！』
「そういうことになるかな……ううん、多分」
　先生は何も言っていなかった、だからきっと、泉の洗礼は受けていない。
「私の方がタチ悪いと思うよ」
　舞は手を伸ばしその手に水の剣を作り出す。大量の水蒸気とそこかしこにある水たまりがその元となった。
　それを見て仮面の者達はどよめく。狭い通路を押し合うように後退していく。
『……いや、恐れる事はない！　鬼はこの者ただ一人、それに我らには退魔の武具がある！』
　女はその武具、二叉の銛を振りかぶり、舞に向けて投げつける。が、それは舞が作り出した水榴に飲み込まれ、勢いを失う。
『な！？』
「んー、どれどれ？」
　舞はその銛を引き寄せ手に取る。その銛は赤い光沢を持つ金属で作られ、柄の表面には読み取ることのできない奇妙な文字が書かれていた。だが、その文字を、舞はどこかで見た気がした。
「んー、実家だったかな、朱き泉だったかな……」
　泉の文献に書かれていた文字。すなわち、泉の加護を受けた武器。
「普通の人や、泉関係以外のバケモノには強いんだろうけど」
　泉関係以外のバケモノ、って言ってもそんなのいないだろうけど。
「泉の洗礼を受けている人間には全く効果ないよ。ねぇ、あなた達、どうせこの銛使って鳳さんたちいじめたんだろうけど、それってちゃんと効いてた？」
『！　……』
「あなた達ってこの村にいて泉の守護者じゃなきゃいけないはずなのに、そういうのぜんっぜん知らないのね」
『当たり前だ！　我々は守られる存在、そもそもここも神聖なる場所、鳳家以外の者は立ち入ってはいけない場所。我々は村長でもある鳳家に貢ぎ、見返りに守護していただく、そういう契約だった』
「でもその関係を結局壊しちゃったわけね」