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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (36)
『そうだ。だが未練はない。我々は我々の手でこの地を守る』
「泉の力を使った武器を手に?」
『ぐ……』
 舞が一歩進む事に、女達は一歩下がる。
『羽鳥様お下がりください、ここは我々が!』
 女の脇を通って男達が前に出る。
「……甘いわねぇ、ここはもう私のテリトリーなんだよ?」
 舞は背後へと手を薙ぎ、氷剣を射る。手に銛を持った男が、慌てて岩陰に隠れ、その岸壁に短剣が刺さる。
「あなた達は囮で、その間に背中から?」
『!』
「あなた達は地の利があると思ってるかもしれないけど、全然ないから。今の私にはこの洞窟が手に取るように分かるもの」
 舞は体を回転させ、その手を追うように水榴が体を包み、それは舞を守る輪となった。
『そんなものっ』
「へ?」
 男の一人が踏み込み、銛を強く振りかぶる。が、それは当然舞の水榴に絡め取られてしまう。
『なっ!?』
「……さっきの話、聞いてなかったの?」
 実際聞いていなかったのかもしれない、全員が面を被り誰が誰だか分からない状態だった。声はくぐもってよく分からず、服も寒冷地用のもので二、三種類くらいしかバリエーションがない。
『くそっ、なんだこの銛使えねぇ!』
「だから言ったでしょ、私には効かないって」
『そんなはずねぇ! さっきは効いたんだ!』
 さっき。
「さっき?」
『くそっ、女とガキはブッ殺せたの――』
 まるでドラムロールのように。
 水榴が男を包み込み、骨を、筋肉を、砕き、かち割り、体を、粉砕した。
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