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風雅、舞い - 第十五章 濁る澱み、清らかな血溜り (37)
『か、河守ッ!!』
『!!!!』
『ヒッィ――――』
『キャーッ!!!』
 舞が起こした惨状に、阿鼻叫喚が上がった。
「彼を……殺したの……お母さんまで……」
『――仕方がないだろう!!』
 男達の背に隠れるようにして、女は叫んだ。
『鳳家の者は殺す! そうしなければ我々が殺される! だから』
「なんで、あんた達が殺されるわけないでしょ!」
『殺された! 現に成宮さんが殺された! 鳳家の息子に! 今お前も殺したじゃないかっ!!』
「先に殺っておいてッ!!!」
『ヒッ!』
 舞は手を薙ぎ氷槍を三投、ひとつは躱そうとしたが逃げ場なく壁に当たった男に突き刺さり、残りふたつは皮のコートで身を隠した男に突き刺さった。
『聖なる外套が効かない!?』
「だから効かないって言ってる!!」
 舞は一気に踏み込み、狭い通路に密集した一団へと突っ込む。
 女も含めて、5人。
 女の前にいる男は銛を振りかぶるが、水を纏う舞はそれを凌駕し脇を駆け抜ける。
 女に肉薄。
 舞は女の胸に手を当て、押す。
「息すらも凍り付け」
 女を押しのけた先に二人の男。一人は銛を身構えているが動かず、もう一人は武器を持たず大型無線機のマイクを持って何事か叫んでいた。
 一瞬、氷の結晶が飛び散り舞の姿を覆い隠す。二人の男の間をすり抜け、銛を持った男が舞を追って振り向く、その背中を誤って女の前にいた男が突き刺す。
『ガッ』
『なっ、お前なんでそこにいんだよっ』
「あーあ、酷いなぁ。友達を殺しちゃった?」
『っ………………』
 舞の嫌味な笑みに、男の手は震えていた。
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