KAB-studio > Machician > 第3話 三者三様 (14)
Machician - 第3話 三者三様 (14)
「――これはこの公式を使えばいいわけ。変数の数と、乗数で決められるから」
「あ……はい、わかりました」
 紫恋は少し他人行儀に答えている。あまりジャージの方を見ず、教科書の方しか見ない。人見知りをする方なのか。でも、年齢差を考えれば当然な気もする。
 むしろうめが特殊なのかもしれない。うめシーバリウに勉強を教えている。魔法を使い、西洋人同様の外見、なのにあれほど早くうち解けて、しかももう付き合っている。
 そこには、シーバリウの人当たりの良さもあるのかもしれない。あれほど気楽に話せる相手とは思っていなかった。魔法という共通の話題があるにしても。
「気になります?」
 紫恋の問。
うめ? 王子?」
「それを聞きたかったんですけど」
「両方、かな。あのふたりと自然に話せる自分が不思議だなって」
「……ちょっと、違うかも……」
「?」
 ふたりの視線の先、うめがこちらを向く。
「ねぇ、ちょっと見てくれない?」
「ちょっとシャッフルしてみようかなー。うめ、私が王子に教えてあげるから、今度はあんたが見てもらいなさい」
 紫恋は立ち上がり、うめをどけて王子の隣に座る。
「!?」
「はいはい行った行った。だいたいあんただって教えられるほど余裕ないでしょ?」
「う”……」
 仕方なくジャージの方へと移るうめ
「で、ここを教えてもらいたいのですが」
 さっそくシーバリウは教科書の箇所を指し示す。
「ここは確か……これね」
 他の参考書をめくり渡す。シーバリウがそれを熟読する。
 その横顔は、きれいだった。
 真摯な青い瞳、定規で引いたような輪郭、白く透明な肌、黄金のような髪。
 それでも。
 うめがいなければ、まず話しかけなかっただろうと思う。
「……? どうされました?」
「ん……王子は、うめのどんなとこが好きなの?」
「そうですね……」
 視線がうめへと向く。
「優しいところ。前向きなところ。温かいところ。一緒にいて落ち着きます」
「なるほど、似たものどうしってところかもね」
「え、……そうなんですか?」
「……たぶん、ね」
 たぶん、違うけど。
 検索