「よろしいですか?」
「早くして」
痛みに耐えるうめを紫恋は背中から抱き、その紫恋の背中をシーバリウが抱く。
一週間前の事を思い出す。あの時も、気持ちよかったな……。
「いいですか、紫恋さんの視界に何かが現れるはずです。それをきっかけにしてください」
「何かって、何?」
「それはわかりません、借威対象によって異なりますから」
「そか……いいよ、始めて」
シーバリウは深呼吸して、息を整える。
純粋魔法。
……こんなに魔法力に困るなら、もっと勉強しておけば良かった……。
頭を振って、雑念を取り払う。
集中。
純粋魔法、発動。
『ッ!!』
紫恋の視界に、極彩色の空間が現れる。
吐き気を催すほどの、強い臭い。
時間さえ狂うほどの、耳障りな轟音。
その中を駆け巡る、閃光。
白く光る閃光が紫恋の周囲を目にも止まらぬ速さで駆け巡る。その数、十、二十、三十。
しかしそれは。
なぜか紫恋には、なじみ深い、理解できる、心強い、何かだった。
私はこれを、知っている。
表層意識には出てこない、自分の中に眠っていた何か。
それが、きっとこの前の祭の夜に、表へと出てきた。
いや、もしかしたらもっと前、最初の夜から……。
私の中に眠る力。
現れてはいけなかった力。
高士が、父さんが、私や母さんを腫れ物のように扱っていた原因。
あの化け物を蘇らせたのも、きっとこの力。
でも。
私は受け入れる。
父のため。
母のため。
王子のため。
高士のため。
そして、この暖かい背中のために――
――ただひとつの閃光が、自ら包みこまれるように、伸ばす両手へと飛び込んだ。
「早くして」
痛みに耐えるうめを紫恋は背中から抱き、その紫恋の背中をシーバリウが抱く。
一週間前の事を思い出す。あの時も、気持ちよかったな……。
「いいですか、紫恋さんの視界に何かが現れるはずです。それをきっかけにしてください」
「何かって、何?」
「それはわかりません、借威対象によって異なりますから」
「そか……いいよ、始めて」
シーバリウは深呼吸して、息を整える。
純粋魔法。
……こんなに魔法力に困るなら、もっと勉強しておけば良かった……。
頭を振って、雑念を取り払う。
集中。
純粋魔法、発動。
『ッ!!』
紫恋の視界に、極彩色の空間が現れる。
吐き気を催すほどの、強い臭い。
時間さえ狂うほどの、耳障りな轟音。
その中を駆け巡る、閃光。
白く光る閃光が紫恋の周囲を目にも止まらぬ速さで駆け巡る。その数、十、二十、三十。
しかしそれは。
なぜか紫恋には、なじみ深い、理解できる、心強い、何かだった。
私はこれを、知っている。
表層意識には出てこない、自分の中に眠っていた何か。
それが、きっとこの前の祭の夜に、表へと出てきた。
いや、もしかしたらもっと前、最初の夜から……。
私の中に眠る力。
現れてはいけなかった力。
高士が、父さんが、私や母さんを腫れ物のように扱っていた原因。
あの化け物を蘇らせたのも、きっとこの力。
でも。
私は受け入れる。
父のため。
母のため。
王子のため。
高士のため。
そして、この暖かい背中のために――
――ただひとつの閃光が、自ら包みこまれるように、伸ばす両手へと飛び込んだ。