「牢屋……」
それが、紫恋の感想だった。
紫恋の眼下に展開された光点は、一瞬にして石人へと収束する。その軌跡が格子となり、石人を包み込む。
石人は、その中でも、暴れる。石が格子に触れるたびに、砂をまき散らして体を削る。それでも暴れることをやめず、軌跡の動きさえも変えて、全体として石人の形に格子が形成される。
軌跡はその動きが緩やかになるに従い、輝きを失わせていく。格子の内が影へと変化していき、石人の動きが鈍くなっていく。
やがてそれは完全な闇となり、石人の型を成したオブジェとなって、境内の中央に鎮座した。
「……終わった……のかな」
「そうみたい。行ってみよ、うめの傷も治してもらいたいし」
紫恋は羽を操って、少しずつ降りていく。だが。
「きゃっ」
「う”っ」
がくん、がくんと、滑らかとは言い難い降下を続ける。
「痛たたた……乗り心地悪……」
「悪かったわねー、練習してうまくなって、いつか王子の杖よりも気持ちよくさせてあげるんだから」
「うわーえろー」
「ば、バカ、そういう意味で言ったんじゃないって、ってゆーか怪我してるわりに元気ねあんた」
「痛いのに慣れてきたかも……」
「マゾかあんたは。降りるよ……王子!!」
紫恋はうめをゆっくりと地面に寝かせつつ、背を向ける王子に声を掛ける。
「……王子! 王子!?」
「え?」
焦る紫恋に、王子はゆっくりと答えた。
「あ、……なんだ、驚かさないでよ……ッ――」
「紫恋さん、でずか?」
両手で掴んでいた剣を離して、シーバリウはゆっくりと二人の方へと向く。
その前に、気付くべきだった。
地面に、血溜りが、できていることに。
「ごめんなさい”、気付かな”くて」
シーバリウが振り向くと、血飛沫が、飛ぶ。
閉じた目から、涙のように血が流れ、両の耳から、滴るように血がこぼれ、開く口は、茶椀のように血が溢れる。
「ちょ、ぢょっと使いすぎてしまいまじた。大丈夫でずから、し、心配しな――」
血煙が舞う。
「がっ、がはっ」
咳と共に口から血飛沫が飛び散り、胸を押さえて、そのまま、血溜りの中に、倒れた。
「……王、子………………王子ぃ!!」
シーバリウは、こたえなかった。
続く。
それが、紫恋の感想だった。
紫恋の眼下に展開された光点は、一瞬にして石人へと収束する。その軌跡が格子となり、石人を包み込む。
石人は、その中でも、暴れる。石が格子に触れるたびに、砂をまき散らして体を削る。それでも暴れることをやめず、軌跡の動きさえも変えて、全体として石人の形に格子が形成される。
軌跡はその動きが緩やかになるに従い、輝きを失わせていく。格子の内が影へと変化していき、石人の動きが鈍くなっていく。
やがてそれは完全な闇となり、石人の型を成したオブジェとなって、境内の中央に鎮座した。
「……終わった……のかな」
「そうみたい。行ってみよ、うめの傷も治してもらいたいし」
紫恋は羽を操って、少しずつ降りていく。だが。
「きゃっ」
「う”っ」
がくん、がくんと、滑らかとは言い難い降下を続ける。
「痛たたた……乗り心地悪……」
「悪かったわねー、練習してうまくなって、いつか王子の杖よりも気持ちよくさせてあげるんだから」
「うわーえろー」
「ば、バカ、そういう意味で言ったんじゃないって、ってゆーか怪我してるわりに元気ねあんた」
「痛いのに慣れてきたかも……」
「マゾかあんたは。降りるよ……王子!!」
紫恋はうめをゆっくりと地面に寝かせつつ、背を向ける王子に声を掛ける。
「……王子! 王子!?」
「え?」
焦る紫恋に、王子はゆっくりと答えた。
「あ、……なんだ、驚かさないでよ……ッ――」
「紫恋さん、でずか?」
両手で掴んでいた剣を離して、シーバリウはゆっくりと二人の方へと向く。
その前に、気付くべきだった。
地面に、血溜りが、できていることに。
「ごめんなさい”、気付かな”くて」
シーバリウが振り向くと、血飛沫が、飛ぶ。
閉じた目から、涙のように血が流れ、両の耳から、滴るように血がこぼれ、開く口は、茶椀のように血が溢れる。
「ちょ、ぢょっと使いすぎてしまいまじた。大丈夫でずから、し、心配しな――」
血煙が舞う。
「がっ、がはっ」
咳と共に口から血飛沫が飛び散り、胸を押さえて、そのまま、血溜りの中に、倒れた。
「……王、子………………王子ぃ!!」
シーバリウは、こたえなかった。
続く。