「いっそのこと、これ、町の名物にでもしますか」
錦が見上げる黒い巨像。艶のない、現実にはあり得ない漆黒の表面で覆われた巨大な正方形が、空中に浮いたままの形で固まっている。シーバリウの魔法によって封印された石人は、まるで前衛的なオブジェのように境内の中央に微動だにせずただ立っていた。
「ねぇ、神主さんもそう思いません?」
錦が視線を神主へと向ける。その目は、笑っていない。
「……」
神主は、何も答えない。
だが、錦に正対し、その視線を受け止めていた。
「うめの傷、AP化しなければ治らないそうだ。それどころか、もしかしたらと思うと……だから」
その瞳には、怒り。
「今後、うめには会わせないで頂きたい」
「申し訳ないが承諾できない」
神主は即答した。
「……加害者の父親とは思えない発言ですね」
「我々は父親です。当事者ではありません」
「子にとって親は当事者ですよ」
「子供達がそう思っているだろうか」
「思っているいないは関係ないでしょう。親がそう判断したんだから、子をしつけるのは当然だ」
「私は」
おもむろに錦が近寄り、襟首を掴んで持ち上げる。
「ぐっ……」
「わからないのか? 俺は怒ってるんだ、それくらい気付け」
「分かっている」
「ならそんな澄ました顔するな!! 俺はAPなんだ、お前くらい……っ!?」
一瞬。
襟を掴む手が複雑に絡み合う。それが元に戻ると今度は錦の体が逆さまになり、地面に叩き付けられる。
「な……」
間髪入れずに神主が近づく。
「がっ、知らねぇぞ!!」
錦が殴りつける。
が、その手は振るわれる前に止められ、ダンスを踊るように錦は振り回されて、再び地面を転がる。
「くっ」
再び近寄る神主。同じ事が二度、三度、続いていく。
「……くそっ!!」
錦は地面にへたりこみ、地面を殴りつける。地面にひびが入る。
「その力があっても、どうしようもないことがあるということです」
「!?」
「あなたのお怒りはごもっともです。でも、それと、娘達をどうすればいいのか、どう育っていくのかは別の話です。私だって」
初めて、神主は目をそらす。
「幸せになるのだとすれば、紫恋を柱にでも縛り付けますよ」
「……」
錦が見上げる黒い巨像。艶のない、現実にはあり得ない漆黒の表面で覆われた巨大な正方形が、空中に浮いたままの形で固まっている。シーバリウの魔法によって封印された石人は、まるで前衛的なオブジェのように境内の中央に微動だにせずただ立っていた。
「ねぇ、神主さんもそう思いません?」
錦が視線を神主へと向ける。その目は、笑っていない。
「……」
神主は、何も答えない。
だが、錦に正対し、その視線を受け止めていた。
「うめの傷、AP化しなければ治らないそうだ。それどころか、もしかしたらと思うと……だから」
その瞳には、怒り。
「今後、うめには会わせないで頂きたい」
「申し訳ないが承諾できない」
神主は即答した。
「……加害者の父親とは思えない発言ですね」
「我々は父親です。当事者ではありません」
「子にとって親は当事者ですよ」
「子供達がそう思っているだろうか」
「思っているいないは関係ないでしょう。親がそう判断したんだから、子をしつけるのは当然だ」
「私は」
おもむろに錦が近寄り、襟首を掴んで持ち上げる。
「ぐっ……」
「わからないのか? 俺は怒ってるんだ、それくらい気付け」
「分かっている」
「ならそんな澄ました顔するな!! 俺はAPなんだ、お前くらい……っ!?」
一瞬。
襟を掴む手が複雑に絡み合う。それが元に戻ると今度は錦の体が逆さまになり、地面に叩き付けられる。
「な……」
間髪入れずに神主が近づく。
「がっ、知らねぇぞ!!」
錦が殴りつける。
が、その手は振るわれる前に止められ、ダンスを踊るように錦は振り回されて、再び地面を転がる。
「くっ」
再び近寄る神主。同じ事が二度、三度、続いていく。
「……くそっ!!」
錦は地面にへたりこみ、地面を殴りつける。地面にひびが入る。
「その力があっても、どうしようもないことがあるということです」
「!?」
「あなたのお怒りはごもっともです。でも、それと、娘達をどうすればいいのか、どう育っていくのかは別の話です。私だって」
初めて、神主は目をそらす。
「幸せになるのだとすれば、紫恋を柱にでも縛り付けますよ」
「……」