「うーん……」
全10ページの小冊子を最初から最後まで何度も何度も読み返して、それでもうめは悩み続けている。
病院のベッドの上。足下に白い箱が置かれ、その中に右足を入れている。
「まだ悩んでるの?」
紫恋が売店から買ってきたノートと鉛筆を手に部屋に入る。
「治療方針決めないとその箱取れないんだから、王子に会えないよ?」
「それは分かってるんだけど……」
うめは小冊子の表紙を改めて見る。「はじめてのAP(Advanced Person)」と書かれた、シンプルな表紙。
「そりゃ、APになりたかったけど、でもパパやママのあの顔見ちゃうと、ちょっとね……」
「でもAPにならなきゃ完治しないんでしょ?」
「そんなことないって、確かに完治はしないんだけど、傷が残って、ちょっと動きが悪くなるくらいで、日常生活には支障ないレベルにはなるんだって」
「へー、進歩してるのねー」
「でもお金考えると、APの方がいいんだけどね」
「私が言うのもなんだけど、そういうので親に気を使わない方がいいよ」
「うん……」
もう一度、表紙を見る。
なりたいと思っていた、AP。
でも。
親がそれを知った時の、複雑な表情。
一般的になってきたと思っていても、まだまだAPになることでの弊害はあるらしかった。
「私はAP化勧めるけどね。遅かれ早かれあんたはAPになるんだろうし、それに」
長い、沈黙。
「なんでもない」
「気になるなぁ」
「あ、それに、王子に近くなると思うよ。魔法使いとAP」
「ははーん」
うめがにやりと笑う。
「私と近くなる、って言いたかったんじゃない?」
「なんでやねん」
鋭いなぁ。
「私、もっといろんな魔法使えるようになるから。今に王子くらいになってみせるよ」
「魔法ってそんな簡単に憶えられないと思うけど……」
「へ? ずっと練習すれば経験値貯まって憶えられるようになるんじゃないの?」
「ゲームじゃあるまいし……って、ゲームみたいなとこもあるだっけ。紫恋が覚えた時のあれ、またしないと憶えないと思うよ。王子から聞いてないの?」
「あの時はそんな暇なかったし、それに……」
「……」
二人は、病院の窓を見る。
全10ページの小冊子を最初から最後まで何度も何度も読み返して、それでもうめは悩み続けている。
病院のベッドの上。足下に白い箱が置かれ、その中に右足を入れている。
「まだ悩んでるの?」
紫恋が売店から買ってきたノートと鉛筆を手に部屋に入る。
「治療方針決めないとその箱取れないんだから、王子に会えないよ?」
「それは分かってるんだけど……」
うめは小冊子の表紙を改めて見る。「はじめてのAP(Advanced Person)」と書かれた、シンプルな表紙。
「そりゃ、APになりたかったけど、でもパパやママのあの顔見ちゃうと、ちょっとね……」
「でもAPにならなきゃ完治しないんでしょ?」
「そんなことないって、確かに完治はしないんだけど、傷が残って、ちょっと動きが悪くなるくらいで、日常生活には支障ないレベルにはなるんだって」
「へー、進歩してるのねー」
「でもお金考えると、APの方がいいんだけどね」
「私が言うのもなんだけど、そういうので親に気を使わない方がいいよ」
「うん……」
もう一度、表紙を見る。
なりたいと思っていた、AP。
でも。
親がそれを知った時の、複雑な表情。
一般的になってきたと思っていても、まだまだAPになることでの弊害はあるらしかった。
「私はAP化勧めるけどね。遅かれ早かれあんたはAPになるんだろうし、それに」
長い、沈黙。
「なんでもない」
「気になるなぁ」
「あ、それに、王子に近くなると思うよ。魔法使いとAP」
「ははーん」
うめがにやりと笑う。
「私と近くなる、って言いたかったんじゃない?」
「なんでやねん」
鋭いなぁ。
「私、もっといろんな魔法使えるようになるから。今に王子くらいになってみせるよ」
「魔法ってそんな簡単に憶えられないと思うけど……」
「へ? ずっと練習すれば経験値貯まって憶えられるようになるんじゃないの?」
「ゲームじゃあるまいし……って、ゲームみたいなとこもあるだっけ。紫恋が覚えた時のあれ、またしないと憶えないと思うよ。王子から聞いてないの?」
「あの時はそんな暇なかったし、それに……」
「……」
二人は、病院の窓を見る。