「はいはい、じゃ買ってくるから」
そそくさとジュースを買いに行った紫恋を追い出して、ジャージは溜息をつく。
「好き、か……」
そう言われれば、嫌でも意識してしまう。
目の前の、カプセルの中でたゆたう男性のことを。
「そんなの、わかんないよ……」
そのカプセルの表面を指でなぞる。
頬を、撫でるように。
「そりゃあ」
好きか嫌いかで言えば、好きなんだと思う。
でも、シーバリウを知る人は、10人中9人はそう言うと思う。
「いいひと」で、かといって優柔不断じゃなく、努力家でもある。なにより見た目がかっこいい。まさに「王子の中の王子」かもしれない。
だから、私がシーバリウを「好き」と言う、それは単なる一般論でしかない。
「……」
ジャージの手が、ゴーグルに掛かる。
「……邪魔」
これが、シーバリウを直視させないようにしている。
これが、自分とシーバリウの間に壁を作っている。
だって、壁を作らなくちゃいけないんだもの。
仕方ないじゃない。
「……はぁ」
ゴーグルから手を離し、手をカプセルに着く。鏡のように、カプセルの中に手が刷り込む。
その手が、鏡の束縛を破って、とんとんとカプセルを内側から叩く。
「……!?」
二人の目が、合う。
「ひっ!?」
思わず仰け反り、椅子が倒れる。
『じゃーごぼごぼ、じゃーじさん……』
見つめるのは、意識を取り戻したシーバリウだった。
「あ……あ、ちょっと待ってね!!」
すぐにナースコールを押し、息を落ち着かせてから、カプセルに顔を近づける。
「大丈夫? 聞こえる? 息苦しくない?」
『はい、不思議ですね、溺れているんですけど、息ができるんです』
「今先生を呼んだから、ちょっと待ってね。多分ちゃんとした手順を取らないと大変なことになると思うから」
『はい、わかりました。……ジャージさん、看病してくれてたんですか?』
「えっ!? う、うん……」
『ありがとうございます!』
その、にっこりとした笑顔に。
『……ジャージさん?』
「うっ、うっ……本当に、本当に良かった……」
ジャージは涙が止まらなかった。
そそくさとジュースを買いに行った紫恋を追い出して、ジャージは溜息をつく。
「好き、か……」
そう言われれば、嫌でも意識してしまう。
目の前の、カプセルの中でたゆたう男性のことを。
「そんなの、わかんないよ……」
そのカプセルの表面を指でなぞる。
頬を、撫でるように。
「そりゃあ」
好きか嫌いかで言えば、好きなんだと思う。
でも、シーバリウを知る人は、10人中9人はそう言うと思う。
「いいひと」で、かといって優柔不断じゃなく、努力家でもある。なにより見た目がかっこいい。まさに「王子の中の王子」かもしれない。
だから、私がシーバリウを「好き」と言う、それは単なる一般論でしかない。
「……」
ジャージの手が、ゴーグルに掛かる。
「……邪魔」
これが、シーバリウを直視させないようにしている。
これが、自分とシーバリウの間に壁を作っている。
だって、壁を作らなくちゃいけないんだもの。
仕方ないじゃない。
「……はぁ」
ゴーグルから手を離し、手をカプセルに着く。鏡のように、カプセルの中に手が刷り込む。
その手が、鏡の束縛を破って、とんとんとカプセルを内側から叩く。
「……!?」
二人の目が、合う。
「ひっ!?」
思わず仰け反り、椅子が倒れる。
『じゃーごぼごぼ、じゃーじさん……』
見つめるのは、意識を取り戻したシーバリウだった。
「あ……あ、ちょっと待ってね!!」
すぐにナースコールを押し、息を落ち着かせてから、カプセルに顔を近づける。
「大丈夫? 聞こえる? 息苦しくない?」
『はい、不思議ですね、溺れているんですけど、息ができるんです』
「今先生を呼んだから、ちょっと待ってね。多分ちゃんとした手順を取らないと大変なことになると思うから」
『はい、わかりました。……ジャージさん、看病してくれてたんですか?』
「えっ!? う、うん……」
『ありがとうございます!』
その、にっこりとした笑顔に。
『……ジャージさん?』
「うっ、うっ……本当に、本当に良かった……」
ジャージは涙が止まらなかった。