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Machician - 第8話 アイとコイと (19)
「本当にいいの?」
「大丈夫だから」
 はこねうめをおぶさり、待逢神社の石段を登っていく。少し上には、待逢家の人達。
APになったら、このくらい軽いの?」
「そうね、軽いと言えば軽いけど……うめは、鉄アレイと生卵、どっちの方が持ち運びしやすいと思う?」
「……」
APになる時にはまず講習を受けて、クラスを取るの」
「パパやママも取ったの?」
「もちろんよ。力をコントロールするための訓練や、間違った使い方をした場合の処罰を教わったり。しかも定期的に更新しなきゃいけないし」
「大変なんだ……」
「それでも」
 よいしょ、とうめをおぶいなおす。
「この力があるから、うめをおんぶできるの。それは嬉しいことだから」
「だよね……」
 力の余裕があるにもかかわらず、はこねはゆっくりと石段を登り、紫恋達の姿はもう見えていない。それでも、二人は、そのゆったりとした時間を大切に感じていた。
「ねぇ、ママはパパとどこで会ったの?」
「料理の講習」
「え、もうその時からコックさんになろうと思ってたの?」
「そうよ、パパは管理栄養士を目指していて、でもその講習って女の人が多くて、それにパパってその頃も結構がっちりしてたからすごく目立って」
「へー、敵多かったんだ、どうやって勝ち取ったの?」
「ママは人当たりは良かったから、パパの料理すごく褒めたらそれで調子に乗っちゃって、何かのコンクールに出て、ぼろっぼろに負けちゃって、なぐさめようとしたらいつの間にか私の方がなぐさめられてて、その頃からね」
「パパって結構単純そうだもんね」
「そんなことないの、単純な人があんなに美味しい料理作れるわけないでしょ」
「はいはい」
うめの方はどうなの?」
「何が?」
王子様、と」
「……聞いてるんでしょ?」
「そういうことじゃなくって、うめの気持ち」
「……」
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