KAB-studio > Machician > 第9話 君がそこにいるから (16)
Machician - 第9話 君がそこにいるから (16)
「なぜあなたがそんなことを言うんです!」
 母が、一歩一歩、近づいてくる。
 死体の上を、歩いてくる。
「それは、あなたが一番よく知っているはずです」
「……」
 僕は、母の目を見ることができずに、逸らしてしまう。
「素直になりなさい。悔やんでいるのでしょう」
「僕は、悔やんでなんか」
「後悔しているのでしょう」
「後悔なんて」
「仕方ないと思っているのね」
「っ……」
 母は、立ち止まる。
 一番手前にある、死体の上で、立ち止まる。
「さあ、殺してしまいなさい、シーバリウ
「っ……」
 視線を戻した先に。
 金色の髪の、少年が。
 手には、一振りの剣。
 その少年の肩に手を置き、母は、肩を押した。
 少年が、一歩、一歩、近づいて、来る。
「なんで、なんで」
 僕は、僕は、
 ただ、ただ、
 幸せに、幸せに、
 泣きたくない、泣きたくない、
 誰か、誰か、
 僕を、僕を、
 少年は、微笑んで、言った。
「誰に? 何に? なぜ? どうして? 何のために?」
「僕は」
「答えられないのなら、忘れた方がいいよ」
「――――」
 答えられない。
 僕は、もう誰にも、悲しんで欲しくない。泣く所なんて見たくない。
 なのに、その気持ちを誰も分かってくれない。
 僕が助けようとしても、誰かが僕の邪魔をする。
 助けたのに、誰も感謝してくれない。
 助けて欲しいと思うだけで、助かろうとしない。
 助けたかった人を、助けられなかった。
 そんな無意味なことを、したい、その理由を、言葉にできない。
 だから。
 それはきっと、無駄で、無意味で、だから、きっと、僕はそれを忘れてもいいんだ。
 心の奥にある、この気持ちを、見なかったことにしてもいいんだって。
「大丈夫」
「え」
 隣に立つ女性が、シーバリウの手を、握った。
 検索