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Machician - 第10話 HACの街 (22)
「まず、腕の接合は完全に完了したから。でも、因子の定着にあと10時間くらい必要だから、それまではこのコルセットで固定しっぱなし」
「10時間経ったら外していいんですね」
「そ。そのあとは元通り使えるから」
 電車の中。
 ボックスシートの中で、向かい合って座るふたり。
「……ジャージさんって、APなんですよね」
「そう。これと、他に回復系ね。即効性じゃないんだけど、こういうふうにちゃんと治療すれば完全に治癒するタイプ」
 指で、ゴーグルを、そしてコルセットを叩く。
「…………」
「……?」
 シーバリウは、大きく息を吸って、吐く。
「……ゴーグルを外した顔、僕に見せてもらえませんか?」
「!?」
 ジャージは、戸惑った。
「今なら、人もいませんし」
 四人掛けボックスシートにはシーバリウジャージだけ。まわりは人もまばらだった。
「何言ってるの、そんなのだめだって」
「多分そうしないと、何も始まらないと思うんです……僕は」
 シーバリウは少し体を乗り出して、ジャージの手を握る。
「僕はジャージさんを……いえ、真美さんにちゃんと向き合いたいんです」
 そのシーバリウの真摯な瞳は、ジャージに向けられ、決して逸れることはなかった。
「……覚悟、できてる?」
「はい」
「わかった」
 ジャージは、ゴーグルの側面に手を添える。ボタンを押して、バンドを緩める。
シーバリウが外して」
「……はい」
 唾を飲み込む。
 手が震える。
 ゴーグルに手を掛け、上へと持ち上げ、ゆっくりと外す。
「っ……」
 何度見ても、信じられない気持ちになる。
 目の前に、自分の母親が座っていた。
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