「……大丈夫？」
「っ」
　その声すらも、母親の声。
　シーバリウの手が、震える。
「この目を視た人は、私の姿形を自分の母親として認識してしまう……そういう魔眼とでも言える魔法が掛けられているの」
「少しは抵抗できると思ったのですが、完全にそう見えます」
「相当強力らしいから。目が発現体になっているっていうだけで、直接見なくても効果があるし、この前はワース着ている相手にも効いたし」
「確かにこれは……」
「……でも」
　シーバリウの手は、震えたまま。
　その手を、ジャージは握ろうとして。
「っ！」
　シーバリウは、手をはね除けてしまう。
「……あんたの恐がり方……」
「……もっと、色々話してください」
「？」
「姿や声を似せることはできても、話方は変わらないようですから」
「そっか、そうだね……」
　シーバリウへと伸ばした手を戻し、とつとつと話し始める。
「私は、外内の研究施設で作られた。クローンとかじゃなくて、遺伝子バンクから購入した精子と卵子から作られたの」
「……父親も母親も知らないということですか」
「遺伝上のはね。学歴と職歴だけは知ってるけど、ただのスペックとしての情報だし。それと、仮の父親はいたわ」
「仮、ですか」
「そう。正式に言うとクライアント、お客さんだけど。父は私を、自分の母親の代わりにしたくて、この魔法を植え付けたそうよ」
「…………」
「その父は有名な実業家で、外内が調停委員会に解体されたときに、私との縁を切ったわ。私は外内姓、そして製造番号の03から真美ってつけられてほっぽり出された」
「そうでしたか……」
　シーバリウは少しうつむき、もう一度深呼吸をしてから、手を伸ばす。
「え」
　シーバリウは、ジャージの手を握る。
「やっぱり、感触は変えられないようです。肌の暖かさは、ジャージさんのものです」
「…………ありがと」