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Machician - 第5話 待逢として (1)
「……」
『……』
『……』
 沈黙。
 喧噪の中の、沈黙。
 直立不動のセラフ、その回りを取り囲むロープと警官、さらにその外で男達が祭の準備をしている。
 永遠とも思える時間の中で、楽しみは外の作業を見ること、それだけだった。
 ブゥウウウン……。
 遠くで空気の振動音。見上げれば、青空の中を機花ジファが浮かび、そのカメラがセラフを向いている。警察のものか、それとも報道のものか。拡大すればわかるはずだが、その気も起きない。
『うるさいな……あれくらい撃ち落とせないのか?』
 ウィンドウモニターに映る林田父の顔が、右下方を、右コントローラー近くのパネルの方を向く。
「父さん!!」
 ビク、と隣のウィンドウモニターに映る少女が恐怖に顔を引きつらせる。
「あ、ご、ごめんふりかちゃん……」
 モニター越しに、林田父と一緒に座っている花山ふりかがゆっくりとうなずく。
「父さんも、お願いだから何もしないでください」
『わかったわかった。ただ、いいかげん気が滅入ってきてな』
 その原因を作ったのはあなたでしょう!!
 と怒鳴りたくなるのを必死に抑え込む。
 ふりかの表情は、再び落ち着いていた。
 いや、多分そう見えるだけ。ワースから外に出力される「表情」は、気持ちを表現したCGに過ぎない。本当の精神状態はフィルタリングされている可能性があるから、見た目以上にきついのかもしれない。
 ……自分も、そろそろ限界かもしれない……。
 セラフという密室の中に閉じこめられてから、いや、自らの父親を閉じこめてから、3日目。
 ワースは、絶対の生存を保証する。
 3日間、何も摂っていないが、体力的な衰えはまったくない。
 しかも、常に覚醒状態に固定されるため、夜中も父親を見張ることができる。
 常に目が冴え、動くことができず、飲み食いもできず、ただ、そこにいるだけ。
 それが3日間……。
「……」
 自分でも、よく耐えていると思う。
 ふりかという人質がいること。その犯人が父親という事実。
 このふたつが自分を踏ん張らせている。
「……?」
 セラフの足下、警官達が動いて、ロープが張り直される。歪んだ輪の外に女性達が並び、録音された曲に合わせて女性達が踊る。
『そうか、あさってだったな』
『お祭り……行きたいな……』
 自分達は、忘れ去られている。林田巡査は、そう感じた。
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